“妊娠前の管理”は、子どもを授かるという点でとても重要な因子であります。
その中で、「糖尿病は不妊症と関係があるのか」という疑問が浮かぶかもしれません。
糖尿病の患者様は、女性ではインスリン抵抗性によるインスリン欠乏症や排卵機能障害、男性では自律神経失調症による勃起不全や逆行性射精などが不妊症と関連すると言われています。
特に、インスリン抵抗性は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)との関連が推定されます。
一般に不妊症は糖尿病などの糖代謝異常のある男女ともに発症する可能性があります。
不妊症の原因としては、排卵因子、卵管因子、男性因子があげられます。糖尿病では、女性側のインスリン欠乏症やインスリン抵抗性、男性側の自律神経失調症による造精障害が不妊の原因となります。また、男性では勃起不全や逆行性射精が認められます。
1型糖尿病は、初潮の遅れ、月経不順、血糖コントロール不良、早期閉経、自己免疫、性腺機能障害などを伴い、排卵障害や不妊症につながります。しかし、1型糖尿病患者では、非糖尿病患者に比べて不妊治療の頻度が低いことが分かっています。これは、子どもを持ちたいと願う糖尿病患者が少ないためと考えられ、不妊症の頻度が有意に高いということはまだ報告されていません。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という疾患は、排卵機能障害、特徴的な卵巣所見(多嚢胞)、内分泌異常(血中LH上昇、男性ホルモン分泌過多)を呈する糖尿病がなくても発症しうる比較的頻度の高い疾患です。PCOS患者の約30%にインスリン抵抗性が認められています。また、PCOSの合併症として肥満が多く、肥満の程度が大きいほどインスリン抵抗性が強くなることが知られており、高アンドロゲン(男性ホルモン)状態と関連している可能性があります。

日本産科婦人科学会では、PCOSの治療方針を定めています。排卵障害の治療には、クエン酸クロミフェン(ホルモンの分泌を促す)、腹腔鏡下卵巣穿孔術、ゴナドトロピン(ホルモン)療法などがあります。また、インスリン抵抗性に起因する排卵障害の女性には、体外受精(IVF)が選択肢として考えられます。
男性では、勃起不全や逆行性射精に対する治療として、薬物療法や外科手術が行われることがあります。
まとめると、糖尿病は女性ではインスリン分泌不全による不妊症やインスリン抵抗性による排卵障害、男性では自律神経失調症による勃起不全や逆行性射精と関連しています。
また、PCOSの女性は、インスリン抵抗性による排卵機能障害により、不妊症になるリスクがあります。排卵障害の有効な治療法として、クエン酸クロミフェン、腹腔鏡下卵巣穿孔、ゴナドトロピン療法などがあります。また、インスリン抵抗性による排卵障害のある女性には、体外受精(IVF)が選択肢となる場合もあります。男性の勃起不全や逆行性射精の治療には、薬物療法や手術が行われることがあります。
妊娠糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」MEDICAL VIEWより転載一部改変


