A46.妊娠糖尿病/妊娠中の管理 /
糖尿病合併妊娠、妊娠糖尿病と妊娠高血圧症候群の関係はありますか?

b.妊娠中のトラブル

妊娠糖尿病(GDM)、糖尿病合併妊娠、妊娠高血圧症候群(HDP)などの妊娠合併症とインスリン抵抗性の関係について述べています。過剰なインスリン抵抗性の増大は、心血管や内分泌系に影響を与え、高血圧を引き起こす可能性があります。妊娠・出産年齢の上昇に伴い、糖尿病や高血圧の妊婦が増加しています。過剰なインスリン抵抗性によって引き起こされる疾患は、短期的にも長期的にも母子の健康を害する可能性があります。

インスリンは、末梢でのブドウ糖の取り込み、グリコーゲン合成、糖新生、脂質代謝など、さまざまな作用を行うホルモンです。インスリン抵抗性は、組織のインスリン感受性が低下し、インスリンの作用が不十分な状態です。過剰なインスリン抵抗性は、主に肥満が原因であり、過剰に蓄積された脂肪組織の機能異常が原因であると言われています。運動不足や不健康な食事などの環境要因、遺伝的素因、エピジェネティックな影響も関与しています。インスリン抵抗性が高いと、循環器系や内分泌系に直接影響を及ぼし、糖尿病や高血圧など様々な病気を引き起こす可能性があります。

インスリン抵抗性は、妊娠中に生理的に増加します。耐糖能が正常な女性でも、妊娠週数が進むにつれてインスリン感受性は約60%低下することが示されています。2型糖尿病やGDMの妊婦は、耐糖能が正常な妊婦に比べて、インスリン抵抗性の増加がより深刻になる傾向があります。妊娠中のインスリン抵抗性増加の原因は、脂肪量の増加とホルモンの動態の2つです。脂肪量は、産後の授乳に備えたエネルギー貯蔵と妊娠中の飢餓により、妊娠中に増加します。肥満妊婦では、脂肪量の増加により炎症性物質が増加し、これがインスリン抵抗性の増加に関係する主要なメカニズムであると考えられています。妊娠中のホルモン動態は、エストロゲン、プロゲステロン、コルチゾール、胎盤由来のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)などを増加させます。

妊娠中の耐糖能異常と妊娠高血圧症候群(HDP)の関係では、インスリン抵抗性が重要な因子となります。インスリン抵抗性は高インスリン血症を引き起こし、腎臓のナトリウム再吸収を増加させ、交感神経系を刺激して高血圧を引き起こすと言われています。インスリン抵抗性とHDPの明確な関係はまだ証明されていませんが、肥満の女性では厳格な血糖コントロールと体重コントロールが妊娠高血圧腎症の発症リスクを低下させます。妊娠高血圧腎症の発症リスクは、BMIの上昇とGDMの併発で1.7〜2.0倍、肥満とGDMの併発で3.6倍に上昇します。

インスリン抵抗性の増加は、糖尿病や高血圧など様々な疾患の原因となる可能性があります。妊娠中に耐糖能異常やHDPが認められた妊婦は、産後の観察でインスリン抵抗性が持続していることが示されています。また、GDMやHDPは、母子の健康に短期的・長期的に影響を及ぼす可能性もあります。妊娠中はこれらの疾患に注意を払い、合併症を起こさないよう適切に管理することが必要です。

日本糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」 MEDICAL VIEWより転載 一部改変

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