糖尿病性ケトアシドーシスは、妊娠中に起こりうる糖尿病の重篤な合併症です。代謝系や免疫系の変化により、妊婦さんでは起こりやすいと言われています。また、妊娠中は体脂肪が増加するため、ケトン体の産生が盛んになることがあります。ケトン体は、体内でエネルギー源となるブドウ糖が足りなくなり、代わりに脂肪を分解し始めると生成されます。ケトン体には、アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトンなどがあります。糖尿病性ケトアシドーシスは、高血糖、高いケトン体濃度、酸性の動脈血が特徴です。

妊娠中の極端な糖質制限食は、ケトン体の産生を増加させるため、避けることが重要です。妊娠中にケトーシスを引き起こす主な要因は、飢餓状態です。脂肪の分解である脂肪分解は、妊娠中の飢餓状態では非妊娠時の2~4倍加速され、アシドーシスを起こしやすくなります。糖尿病性ケトアシドーシスは、高血糖、ケトン体濃度の高さ、動脈血の酸性の有無で診断することができます。妊婦のケトアシドーシスには、つわりに伴う吐き気や飢餓、妊娠中のストレス、インスリンの自己中断、切迫早産などのβ刺激薬による治療など、さまざまな可能性が散見されます。
妊娠に伴う糖尿病性ケトアシドーシスの胎児死亡率は9~35%と高く、母体死亡率も4~15%と高いです。したがって、妊婦の糖尿病性ケトアシドーシスを速やかに診断・治療することが重要です。放置しておくと、母体と赤ちゃんの両方に重大な合併症を引き起こす可能性があります。治療には、インスリン療法、脱水や電解質バランスの崩れを改善するための点滴、アシドーシスの是正が必要です。治療中は、定期的に血糖値やケトン体濃度をモニターすることが大切です。妊婦健診で尿ケトンが陽性が持続する方はインスリン治療や糖質量の相談を主治医と行いましょう。また、糖尿病性ケトアシドーシスを予防するためには、妊娠中の血糖値のコントロールをしっかり行い、バランスの良い食事を心がけることが重要です。
日本糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」 MEDICAL VIEWより転載 一部改変


