帝王切開の件数は年々増えており、いまや妊婦さんの約4人に1人が帝王切開で赤ちゃんを出産しています。
帝王切開とは、妊婦さんのお腹と子宮を切開して、そこから赤ちゃんを取り出す分娩方法のことです。
「できれば経腟分娩(自然分娩)で産みたい」という妊婦さんもいるかもしれませんが、妊娠や分娩の経過によっては難しいこともあります。
「帝王切開で早く分娩を終わらせる方が、母体と胎児にとってリスクが少ない」と医師が判断した場合、その理由について妊婦さん本人や家族が説明を受け、同意したうえで帝王切開の手術を受けることになります。
帝王切開には、予定帝王切開と緊急帝王切開の2種類があります。
自然分娩(経腟分娩)が難しいと判断され、分娩時のリスクを回避するために、最初から予定を立てて帝王切開で出産するのが「予定帝王切開」です。
もう一方の「緊急帝王切開」は、もともと自然分娩を予定していたものの、妊娠中や分娩中に何らかのトラブルが起きた場合に急遽行われる帝王切開のことを指します。
どちらの方法も、ママのお腹を切開して胎児を取り出すことに変わりはありませんが、適応されるケースが異なります。
あらかじめ手術日を決めて予定帝王切開が行われるケースは、赤ちゃんに要因がある場合と、ママに要因がある場合の2つに分けられます。
赤ちゃん側の要因
1. 胎位異常 正常な状態であれば、赤ちゃんは足を上にして、頭から生まれてきます。
しかし、頭と足の位置がひっくり返ったいわゆる「逆子」の状態(骨盤位)や、子宮に対して赤ちゃんの体が横になった状態(横位)などの場合、経腟分娩では赤ちゃんに危険を伴うため、予定帝王切開になることがあります。
2. 多胎妊娠 双子や三つ子を妊娠した多胎妊娠の場合、それぞれ胎児が小さいために経腟分娩に耐えられない、あるいは第一子の出産後に第二子が逆子になってしまう、などといったリスクがあるため、予定帝王切開になるケースが多くなります。
3. 巨大児 赤ちゃんの推定体重が4,000gを超えた場合、ママの産道が損傷したり、赤ちゃんの肩甲骨が引っかかって難産になったりするリスクがあるため、予定帝王切開を行うことがあります。
4. 前置血管 胎児を包む卵膜の直下に、臍帯血管が走っていることがあります。この臍帯血管がママの内子宮口に面している状態を「前置血管」といいます。 前置血管は、破水すると卵膜と一緒に破裂し、出血してしまうリスクがあるため、あらかじめ前置血管とわかっている場合は予定帝王切開になります。
ママ側の要因
1. 帝王切開・子宮手術の経験がある 帝王切開での出産経験がある場合、手術で切開した子宮壁の箇所が薄くなっているため、次の出産時に自然分娩をすると子宮破裂などのリスクがあります。また、子宮の病気により「子宮筋腫核出術」などの手術を経験した女性も、同様のリスクがあります。 このような場合、子宮破裂のリスクを避けるために、経腟分娩ではなく予定帝王切開を選択することが多くなります。
2. 児頭骨盤不均衡 「胎児の頭(児頭)と、母体の骨盤の大きさが釣り合っておらず、スムーズな分娩が妨げられる状態」を、児頭骨盤不均衡といいます。 赤ちゃんの頭の大きさと比べてママの骨盤が狭いと、なかなか赤ちゃんの頭が産道を降りてこず、難産となることが多いため、X線による骨盤測定と胎児超音波計測の結果次第では、予定帝王切開のスケジュールが組まれます。
3. 前置胎盤・低置胎盤 胎盤の位置が正常よりも低く、子宮口を塞いでしまう「前置胎盤」になっていると、分娩時に大量出血を起こす危険性があります。 ただし、妊娠初期に前置胎盤であっても、妊娠週数が進むにつれて前置胎盤が治ることも多くあります。 前置胎盤の状態が続くと、妊娠中に出血することも多く、ほとんどの場合、妊娠37週頃までに予定帝王切開を行います。 また、胎盤が子宮口を覆っていなくても、胎盤の位置が低く子宮口に近い場合(低置胎盤)も、予定帝王切開になる場合があります。
4. 感染症・合併症 母体にHIVや性器ヘルペスなどの感染症があり、経腟分娩では胎児に感染する恐れがある場合や、糖尿病や心臓の疾患などの合併症があり、過度な負担をかけられないような場合に、予定帝王切開が選択されます。
予定帝王切開をするかどうか、手術日をいつにするかは、母体の状態と胎児の様子を注意深く観察しながら決められます。
前回の出産で帝王切開を経験している場合、妊娠初期のうちに予定帝王切開が決まることも。それ以外の理由での帝王切開の場合、その理由によって決定する時期が異なりますが、経腟分娩の可能性も視野に入れながら、ギリギリまで検討されることもあります。
帝王切開を行う時期も、帝王切開を必要と判断する理由よって異なります。一般的には、陣痛が起こる前で、なおかつ胎児が十分に発育したと認められるタイミングで帝王切開を行うことになるので、正期産の時期に入る妊娠37~38週頃に手術をするのがことが多くなります。
予定帝王切開の流れは病院によって異なりますが、前日から入院をして麻酔によるトラブルを防ぐために絶食絶飲状態にします。
そして、赤ちゃんの状態をチェックして、問題がなければ帝王切開を行います。 手術の大まかな流れは下記のとおりです。
1. 手術前に浣腸や胎児の心音聴取をする
2. 点滴をする
3. 手術室に入って局部麻酔(もしくは全身麻酔)をする
4. 麻酔が効いたことを確認してから手術を開始する
5. お腹を切開して赤ちゃんや胎盤を取り出す
6. 切開部の縫合などを行う
予定帝王切開の手術は、通常1時間程度で終わります。麻酔をするので手術中に痛みはありませんが、帝王切開を終えてから痛みが現れ、しばらく続くことがあります。
一方、元々は自然分娩を予定していたものの、分娩前や分娩中に赤ちゃんや母体に何らかのトラブルが起きて、早急に赤ちゃんを取り出す必要が生じた場合に行うのが、「緊急帝王切開」です。
赤ちゃん側の主なトラブル
1. 胎児機能不全 妊娠中あるいは分娩中に、赤ちゃんが低酸素症などに陥り、新生児仮死など命に危険が及ぶ恐れがある状態を胎児機能不全といいます。 たとえば、分娩中にへその緒(臍帯)が赤ちゃんの首に巻きついたり、胎盤機能が低下したりして、赤ちゃんに十分な酸素が行き渡らなくなってしまったような場合です。 このような場合は、なるべく早く赤ちゃんを外に出してあげる必要があるため、緊急帝王切開を行うことがあります。
2. 臍帯下垂、臍帯脱出 赤ちゃんの命綱であるへその緒が、破水前に赤ちゃんより先に子宮口まで下がってきたり(臍帯下垂)、破水後に腟内へはみ出たりする(臍帯脱出)ケースです。
臍帯下垂の場合、まだへその緒が子宮内に留まっており、羊水もあるため、へその緒が圧迫されるリスクが少ないといえます。自然に位置が治らない場合は、予定帝王切開となることも。 一方、臍帯脱出が起こると、へその緒が胎児と子宮壁との間に挟まれて圧迫され、胎児に酸素が送られなくなってしまいます。数分以内に胎児機能不全に陥るため、すぐに緊急帝王切開を行う必要があります。
3. 前置血管破綻 胎児を包む卵膜のすぐ下を走っている臍帯血管が、内子宮口に面している状態を「前置血管」といいます。 破水のときに、前置血管が卵膜と一緒に破裂し、出血が起きてしまうことがあります。これを前置血管破綻といい、緊急帝王切開が行われます。
4. 前期破水 陣痛が来る前に卵膜が破れて、羊水が流れ出てしまうことを前期破水といいます。 特に、妊娠37週未満で起こる前期破水の場合、胎児機能不全や子宮内感染などの合併症を引き起こしやすいので、緊急帝王切開を行うこともあります。
ママ側の主なトラブル
1. 分娩停止、遷延(せんえん)分娩 お産が始まったものの、陣痛がなかなか強くならず、子宮口も開かないなど、長時間分娩が進まないような場合です。 陣痛促進剤などの医療処置の効果がなく、すぐ分娩しないと母体や赤ちゃんに影響があると判断されたときや、経腟分娩では難しいと考えられる場合に緊急帝王切開が行われます。
2. 重症妊娠高血圧症候群 妊娠中に高血圧となり、蛋白尿や様々な合併症を引き起こすものを、妊娠高血圧症候群といいます。重症の場合、多くは予定帝王切開になりますが、状態などによっては経腟分娩を選択できることもあります。 しかし、分娩中に母体の状態が悪化したり、胎児機能不全などが見られたりした場合は、緊急帝王切開に切り替えられることもあります。
3. 常位胎盤早期剥離 赤ちゃんが生まれる前に胎盤がはがれてしまうことを、常位胎盤早期剝離といいます。 子宮内で大量出血が起こり、母体・胎児ともに危険な状態になることが多いため、すみやかに緊急帝王切開を行います。
4. (切迫)子宮破裂 過去に帝王切開や子宮筋腫の手術を受けている場合、分娩時に子宮が裂けてしまうことがあります。これが子宮破裂です。なお、自然に起こるケースもゼロではありません。 子宮破裂が起こることは稀ですが、発症すると母体の死亡率は2~5%、胎児にいたっては20~80%と危険性が高いため、緊急帝王切開が行われます。
5. 妊婦心肺停止 何らかの理由で妊婦さんが心肺停止に陥った場合、救命措置を取りつつ、並行で緊急帝王切開を行い、胎児を娩出します。 緊急帝王切開の場合も、基本的には医師から説明を受けて同意書にサインをし、手術を始めます。分娩室に入ったあとの緊急帝王切開の場合、本人や家族の口頭での同意だけで進めることもあります。
手術の大まかな流れは下記のとおりです。
1. 手術前に胎児の心音聴取をする
2. 点滴をする
3. 手術室に入って局部麻酔(もしくは全身麻酔)をする
4. 麻酔が効いたことを確認してから手術を開始する
5. お腹を切開して赤ちゃんや胎盤を取り出す
6. 切開部の縫合などを行う 経腟分娩の場合、産後の入院期間は初産婦で5日前後、経産婦で4日前後ですが、帝王切開の場合は手術の前日・当日も入れて6〜10日間ほどが目安です。
◆緊急帝王切開の費用・保険について 厚生労働省が策定している診療報酬点数表(平成28年度)によると、緊急帝王切開の手術費用は22万2,000円です。
これに加えて、通常の分娩費用もかかるため、自然分娩よりも高額な医療費がかかってしまいます。
しかし、帝王切開の手術費は健康保険が適用されるので、帝王切開にかかる費用に関しては3割の自己負担ですみます。
また、「高額療養費制度」により、1ヶ月の医療費が所定の金額を超えた場合、医療費の一部が払い戻されます。
また、民間の医療保険に加入している場合、帝王切開にかかる費用の一部がカバーされる可能性があるので、事前に保険会社に確認しておきましょう。


