妊娠中に起こる可能性のある「発育不全」とは、どんな状態かご存知ですか?
「胎児発育不全」とは、胎児の発育が基準値と比べて大きく遅滞している状態のことです。
英語の「fetal growth restriction」を略して、「FGR」とも呼ばれることもあります。
胎児の推定体重が、該当する妊娠週数の一般的な胎児体重よりも明らかに小さい場合に、胎児発育不全が疑われます。胎児発育不全は、まれにお腹が小さいことを自覚する方もいらっしゃいますが、ほとんどのケースでは妊婦さん自身に自覚症状がありません。
胎児発育不全は妊婦さんに自覚症状がないため、妊婦検診で検査を受けて見つかることが多くあります。胎児体重基準値からのずれの程度が、-1.5SD値以下である場合が診断の目安とされています。SDとは、平均値から離れている度合いを表す、標準偏差のことです。
ただし、超音波検査による体重計測でわかるのは、あくまで胎児の推定体重であることから、総合的に臨床診断を行うよう推奨されています。 胎児発育不全には複数の原因があり、それらが重なって引き起こされると考えられています。
◆主な原因
(母体)
母体に高血圧・糖尿病・腎臓病などの基礎疾患があったり、妊娠高血圧症候群にかかっていたりする場合に、胎児発育不全が起こることがあります。また、妊婦さんの喫煙や飲酒も原因のひとつとされるため、タバコやお酒は控える必要があるでしょう。胎児の健康のためには、妊娠前から生活習慣を改善したほうが好ましいといえます。 (胎盤・臍帯(さいたい)) 子宮内にある「胎盤」の役割は、母体血から酸素と栄養を受け取ることです。
ところが、胎盤の腫瘍や出血、機能低下などによってこの働きが妨げられると、胎児発育不全が起こる場合があります。
また、胎盤から胎児へ血液を運ぶ「臍帯」の異常も原因のひとつです。臍帯が過剰にねじれて起こる臍帯過捻転などにより、胎児への血流が減少することがあります。
(胎児)
胎児そのものに何らかの原因があり、胎児発育不全となるケースもあります。代表的な例として挙げられるのは、胎児の染色体異常・形態異常・先天性ウイルス感染などです。染色体異常のなかでも、18トリソミー(エドワーズ症候群)や13トリソミー(パトー症候群)は胎児の体が小さいのが特徴で、胎児発育不全を引き起こすといわれています。
◆治療法
胎児発育不全は、考えられる原因を取り除く以外に、現状では明確な治療法がありません。 母体側で可能性のある原因を除去したら、残念ながら現代の医療では、それ以外に発育不全を治すような方法はありません。
医師の指導のもと、定期的に超音波や胎児の心拍数測定などの健診を行い、経過観察をしていきます。お腹の中の赤ちゃんが発育不全と知ったら、ママは不安で仕方なくなるかもしれませんが、できる限りストレスなく穏やかに過ごすことをおすすめします。
赤ちゃんの状況次第で、陣痛がくる前に出産を早める対処が取られることがあるので、NICU(新生児集中治療室)のある病院での診察を検討する必要も出てくるでしょう。
小さい赤ちゃんは陣痛などのストレスに弱く、帝王切開は胎児への負担が少ないため、赤ちゃんの体力次第では帝王切開で出産することがあります。 お腹の中の赤ちゃんの大きさは、個人差があるもの。女の子より男の子の方が体が大きくなる傾向がありますし、ママの体格によって赤ちゃんの大きさへの影響があります。
週数ごとの胎児体重基準値はあくまでも平均的な基準値であり、それより少なくても元気に育つ赤ちゃんもたくさんいます。 またたとえ小さく生まれたとしても、現代医療の発展で助かる赤ちゃんも多くいますから、胎児発育不全の可能性があってもママはあまり思いつめず、担当医師のアドバイスにしたがって過ごすようにしましょう。
【胎向と胎位の異常】 胎向とは、胎児が後ろ(母親の背中の方)を向いているか、前を向いているか(顔が上向きか)という胎児の向きのことです。 胎位とは、胎児の体のうち最初に産道を通る部分(先進部)を表します。通常、頭が先進しますが、ときに殿部や肩が下になることもあります。 胎位異常とは、胎児の体のうち最初に産道を通る部分(先進部)が異常な状態を指します。通常、頭が先進しますが、ときに殿部や肩が下になることもあります。胎向が前向きの場合や胎位が顔位、額位、骨盤位、肩甲位の場合は異常です。
胎位異常にはいくつかのタイプがあります。例えば、後方後頭位(サニーサイドアップとも呼ばれる)は、胎児の頭が下にあるものの、前(母体のお腹側)を向いた状態です。これは最もよくみられる胎向または胎位の異常です。
骨盤位は、胎児の殿部またはときに足が先に下降します。骨盤位は正期産の3~4%に生じます。2番目に多い胎位の異常です。
経腟分娩では、頭位と比べて骨盤位の場合、新生児が損傷を受けやすくなります。出生前、分娩中、出生後にこうした損傷が生じる可能性があり、死亡に至ることさえあります。 陣痛が始まる前であれば、医師が母親の腹部を圧迫して胎位を頭位に直せることがあり、この処置は通常、妊娠37週以降に行います。
陣痛の早期開始を予防するために薬剤(テルブタリンなど)が投与されることもあります。陣痛開始時の胎児が骨盤位であると、問題が生じる可能性があります。 殿部よりも頭の方が大きいため、殿部の大きさにしか広がっていない産道は狭すぎて、頭(殿部より大きい)が通過できないことがあります。また、正常な分娩である頭位の分娩では頭が産道の形に合わせて変形しますが、頭が殿部の後に出てくる場合はこの変形がうまくいかないことがあります。
したがって、胎児の体が出てきても、頭部だけ産道内に引っかかってしまうことがあります。頭部が引っかかると産道で臍帯が圧迫され、胎児に酸素がほとんど届けられなくなるおそれがあります。酸素欠乏による脳の損傷は、頭位で生まれた子どもよりも骨盤位で生まれた子どもに多くみられます。
初産婦では経産婦のように産道が広がっていないため、こうした問題が起こる頻度が高くなります。骨盤位の場合は胎児に障害や死亡が生じるおそれがあるため、医師が骨盤位の胎児の分娩において非常に多くの経験を積んでおり、技術をもっている場合を除き、帝王切開を行った方がよいでしょう。
◆肩甲難産 肩甲難産では胎児の片方の肩が母体の恥骨に引っかかり、胎児が産道で動けなくなります。 分娩時の胎位は正常(頭位)ですが、胎児の頭が出るときに片方の肩が母体の恥骨に引っかかった状態です。そのため、頭が引き戻されて強く腟口に押しつけられます。産道が胎児の胸部と臍帯を圧迫するため、胎児は呼吸できなくなります。その結果、胎児の血液中の酸素レベルが低下します。 肩甲難産はまれですが、以下のいずれかの状態がある場合に多くみられます。
・胎児が大きい
・難産、分娩時間が長い、または短い
・胎児の頭が骨盤内に完全に下りてこないために、 吸引器や鉗子が使用された場合
・母体の肥満
・母体の 糖尿病
・過去の分娩で肩甲難産の経験がある場合
・肩甲難産では、医師が様々な手技を用いて胎児の肩を素早く自由にし、経腟分娩できるよう試みます
このような処置の中で、胎児の腕の神経が損傷したり、胎児の上腕骨や鎖骨が骨折したりすることがあります。
会陰切開(腟口を広げるために行う切開)を行うと娩出の助けになることがあります。 胎位異常を防ぐ特定の方法はありませんが、妊娠中の定期的な健診で胎位を確認することが重要です。
妊娠32週を過ぎると95%、妊娠36週を過ぎると98%の例で、児頭が下になり、正常な胎位に戻ります。しかし、分娩日が近づくに連れて、胎位は戻りにくくなります。
また、医師の指示に従って適切な体重管理や栄養管理を行うことも大切です。
詳しい情報は医師に相談してください。


