妊娠中は、お母さんと赤ちゃんの健康にとってとても大切な時期であるとともに、お母さんの身体の状態が大きく変動する時期でもあります。その一つにインスリン抵抗性の変化があります。インスリンとは膵臓からでるホルモンで、血液中の大切なエネルギー要素であるグルコース(血糖)を細胞や臓器に取り込むためのとても大切な機能を持ちます。
インスリンは、肝臓や筋肉に作用してグルコースをグリコーゲンとして貯蔵することや、たんぱく質や脂肪の合成を行うなどの機能を持ちます。
妊娠中は、このインスリンの働きが悪くなること、つまりインスリン抵抗性が、妊娠が進むにつれて増加します。これは、妊娠中に胎児の発育に必要なグルコースを供給するために必要な自然な生理的変化です。胎盤で産生されるホルモンは、妊婦のインスリン抵抗性の発現に重要な役割を果たすとされています。具体的には、ヒト胎盤ラクトゲンや腫瘍壊死因子αなどの胎盤ホルモンは、インスリン感受性の低下に関与しているとされています。トリグリセリドなどの母体の脂質は、妊娠中に増加する傾向があり、インスリン抵抗性の一因となる可能性もあります。エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチンも、妊娠中のインスリン抵抗性の増多と関連しています。

研究により、インスリン抵抗性は妊娠中、特に妊娠中期(妊娠16週以降)に増加することが示されています。この低下は、正常な妊婦さんでも起こりますが、妊娠糖尿病の妊婦さん、特に肥満の方ではより顕著になります。産後はインスリン抵抗性は急激に改善するのが一般的です。
妊娠中にインスリン抵抗性が強くなり、適切な血糖値管理が行えない場合は、お母さんと赤ちゃんの健康に支障をきたすリスクが上がりますので、妊娠時期に合わせたインスリン抵抗性を理解し適切な血糖管理を行いましょう。
日本糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」 MEDICAL VIEWより転載 一部改変

