A38.妊娠糖尿病/妊娠中の管理 /
つわりの時の血糖管理は?

b.妊娠中のトラブル

妊娠は女性の体が大きく変化する時期であり、つわりもよく経験することです。つわりは吐き気や嘔吐を伴うのが特徴で、一般的に妊娠初期(妊娠15週まで)に起こることが多いです。血糖値に異常がある妊婦さんは、食事摂取量が不安定であったり、食後すぐに嘔吐してしまったりと、血糖値のコントロールが難しくなる場合があります。そのため、血糖コントロールやインスリンの投与量の調整が必要になることがあります。

つわりがひどく、長引く場合は、医師の診察や治療を受ける必要があります。つわりの重篤な合併症としては、ウェルニッケ脳症(ビタミンB1不足による)、腎不全、体重減少などがあります。つわりの治療にあたって、自覚症状の改善と重篤な合併症の予防を行います。具体的に行われる治療としては、安静、1回の摂食量の調整と水分摂取の頻度、脱水への注意、ウェルニッケ脳症予防のためのビタミンB1投与、吐き気止めのためのビタミンB6投与、症状コントロールのための制吐剤使用、深部静脈血栓症予防などが行われます。経口水分摂取が維持されず、脱水の徴候と5%以上の体重減少がある場合は、輸液を開始します。さらに体重減少が続く場合は、脂肪乳剤によるエネルギーを追加することもあります。悪心・嘔吐症状が日常生活を著しく制限する場合は、ドーパミン拮抗薬、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、セロトニン5-HT3受容体拮抗薬などの制吐剤を使用することもあります。

糖代謝異常のある妊婦の場合、つわり中の血糖管理は、食事摂取量(主に炭水化物)、血糖値、ケトン体に気をつけながらインスリンの追加投与を調整する必要があります。血糖値やケトン体の測定は頻繁に行う必要があり、血糖値が不安定になりやすいため、尿中ケトン体も確認する必要があります。低血糖を避けつつ、日内変動を正常妊婦のそれにできるだけ近づけながら、空腹時血糖値70~95mg/dL、食後2時間血糖値120mg/dL以下を目標に、厳格な血糖コントロールを行うことが推奨されています。

つわり中の食事管理は、「食べられるものを、食べられるときに、食べられる量だけとる」ことであり、主食と副食のバランスは平時よりも変動しやすくなります。また、嘔吐の症状は、実際に摂取する食事の量に大きく影響します。そのため、摂取した糖分の量の変化により、食直後の血糖値は通常時よりも不安定になりがちです。摂食量があまりに不安定で予想が困難な場合は、インスリンを食後打ちも検討します。糖代謝異常のある妊婦さんは、こまめに血糖値を自己測定し、可能であれば血糖コントロールのための持続的なグルコースモニターも検討されます。

つわりのある妊婦さんは、症状が重く長引く場合は医療機関を受診しましょう。適切な対策をとることで、妊婦さんは自分の健康と発育中の胎児の健康をよりよく管理することができます。

日本糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」 MEDICAL VIEWより転載 一部改変

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