分娩時に母体の血糖コントロールを維持する目的は、これらの合併症を予防することです。分娩時は、絶食管理と十分なグルコース供給と体液量を維持するために、グルコースを含む輸液を行う必要があります。血糖値は定期的にモニターし、必要に応じて速効型インスリンを投与します。
分娩時の目標血糖値は70~120mg/dLであり、母体の血糖値は、米国産科婦人科学会(ACOG)では70~110mg/dL、産科婦人科診療ガイドラインでは70~120mg/dLに維持することが推奨されています。
分娩時の血糖管理は、分娩に必要なエネルギー量を供給しつつ、必要に応じてインスリンを補充し、グルコースの利用率を高めます。グルコース投与量は、分娩活動期の激しい運動を維持するためのグルコース要求量に対応する必要があります。分娩活動期のエネルギー消費量の増加に伴い、インスリン需要は減少するので、血糖コントロールはこの変化を考慮する必要があります。

分娩時の高血糖時に炭水化物を含まない輸液のみで治療し、十分なグルコース補給を行わない場合、脂質の異化が進むため高ケトン血症となりやすく、母体ケトーシス、ケトアシドーシス、胎児アシドーシスを引き起こす可能性があります。活発な分娩期には、脱水を防ぐため、十分な水分量を維持する必要があります。
陣痛誘発時のグルコースコントロールに推奨される輸液速度は、5%グルコース輸液で100~150mL/時間です。この速度は、分娩活動期から第2期までの「激しい運動」時に必要とされる最大量に相当します。血糖コントロールのためのグルコースとインスリンの投与量は、陣痛の進行に伴い妊婦の労力とエネルギー要求量が増加し、陣痛第2期頃に最大となるため、時間と共に変化します。活発な分娩期には、絶食による管理が基本となります。
全体として、経腟分娩時の血糖コントロールは、母体の血糖コントロールを維持し、胎児・新生児合併症を予防するために、血糖値の注意深いモニタリング、十分な水分量、適切なグルコースやインスリンの投与が必要です。

日本糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」 MEDICAL VIEWより転載 一部改変


