A58.妊娠糖尿病/産後の管理/
糖尿病合併の妊婦さんの退院時の指導について

f.糖代謝異常について

出産後、糖尿病を持つ女性は、自分自身の血糖管理と育児の両立という課題に悩むことが多くなります。

退院指導では、授乳期の血糖管理を中心に、長期的に良好な生活習慣の選択、血糖管理、合併症の予防・管理を進め、次の妊娠への準備や子どもの健やかな成長など、育児を全うすることを目指します。
血糖値管理について、授乳中はインスリン療法が望ましいですが、授乳により血糖値が不安定になり、低血糖になることがあります。これを防ぐために、お母さんは授乳前に炭水化物やタンパク質を含む軽食を摂取して母乳のエネルギー量を増やし、低血糖が起こった場合にはすぐに血糖値を上げることができるブドウ糖や砂糖入りジュースを摂取することが必要です。
また、就寝前にタンパク質を含む乳製品を摂取することで、夜間授乳時の血糖値を維持することができます。
しかし、1型糖尿病で血糖値が不安定な方にとって、授乳は難しく、血糖値のコントロールや育児に支障をきたす場合があります。したがって、糖尿病合併症が子育ての妨げにならないよう、長期的な血糖コントロールへのモチベーションを維持することが必要です。合併症の管理について、妊娠すると、網膜症や腎症などの糖尿病合併症が悪化することがありますので、眼科で網膜症の評価には、必要に応じて産後に蛍光眼底検査を行う必要があります。妊娠による網膜症への影響は一時的なもので、産後約1年続きます。長期の合併症を抑える為にも、継続的な治療と血糖コントロールが重要です。

腎症については、糖尿病性腎症の治療にACE阻害薬やARBが使用されますが、これらの薬剤には胎児毒性作用があり、妊娠中には使用することができません。出産後、授乳期には一部のACE阻害薬を使用することが可能ですので、授乳中の薬剤使用に関して担当の内科の先生に治療を開始できるように相談するようにしましょう。

産後の糖尿病のフォローアップについて、出産後は、次の妊娠に備え、良好な血糖コントロールを維持し、合併症の管理を継続すること、次の妊娠を計画している人には、計画的な妊娠を指導する必要があります。糖尿病の型にもよりますが、母親から生まれた乳児は、将来的に耐糖能異常や肥満のリスクが高くなる傾向があることからも、食事や運動など良好な生活習慣を確立し、自分のため、赤ちゃんのためにも、適切な体格を維持するするように心がけましょう。
以上、授乳期の血糖管理、長期にわたる良好な生活習慣の選択、血糖管理、合併症予防・管理の促進が、糖尿病女性に対する退院指導のポイントです。これらの推奨事項を守ることで、糖尿病女性は子どもの健全な成長を確保することができます。

日本糖尿病・妊娠学会 編集 「妊婦の糖代謝異常診療・管理マニュアル第3版」 MEDICAL VIEWより転載 一部改変

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